2017年11月21日 (火)

歌舞伎夜話-中村芝のぶさん 市川笑野さん-

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「ご登場です」と呼ばれてからツーテンポくらい遅れてご登場のお二人。そして、更に遅れている司会の戸部さんを芝のぶさんが呼ぶと、なんと児太郎さんと一緒にご登場。夜の部があるのであと10分で顔を作らなければならないというのに、お二人の「梅笑會」の宣伝をもの凄い勢いで喋られて風のように去って行かれました……。芝のぶさんはもとより、児太郎さんが中車さんの楽屋をよく訪ねるので、笑野さんともお顔を合わせる機会が多いとか。そういう訳で、一人につき十人誘うようにお達しがありましたので、こちらにリンクを貼っておきますね。「梅笑會」のお知らせ

そして、開始からだいぶ経って「改めまして」というところで、お二人とも自己紹介すらまだしていなかったという……。そもそも「梅笑會」のきっかけは、笑野さん行きつけの居酒屋さんの近所に芝のぶさんが引っ越されて、そこで意気投合されたとか。この会に懸けるお二人の並々ならぬ情熱を感じました。それに、楽しそうでした。ちなみに猿之助さんは出られる気満々だそうです。怪我は治すと云われたとか。
それで、このチラシがつやつやで綺麗ですよねというお話から、笑野さんのお知り合いの岡谷市の中央印刷さん。日本に数台しかない箔押ししたような美しい金銀の印刷ができる印刷機があることなど、まるで営業マンのように熱心に話されてました……。あと、この会社の前身が片倉工業で、笑野さんは観光大使なので舞踊公演の長絹を作ってもらったりというお話も、撚らない絹糸の製造工程を詳しく語られてました……。
芝のぶさんが役者顔で羨ましいと云われる通り、笑野さんは立役でもきりっとされているに違いない二枚目。お母様が日舞を教えられているそうです。太鼓をされていたということに、何故か芝のぶさんが驚かれてましたが。その道(諏訪の太鼓界?)では有名だそうですよ。
一方、芝のぶさんはおっとりとして可愛らしい方でした。中学生の時に南座で観た雀右衛門さんで歌舞伎に興味を持たれたそうです。ご本人としては女方を希望しているわけではなかったそうですが、周囲からそう見られていたのでとのことです。そうそう、美肌の秘訣は馬油だそうです。
面白かったのは、どの家の坊ちゃんも楽屋を走り回るというお話。児太郎さんもそりゃあもうやんちゃで大変でした、と芝のぶさん。三兄弟はそれぞれ個性的だし、七之助さんは顔を作ろうとすると大泣きするし、勘九郎さんは本気で飛び蹴りしてくる。今はもう皆さん立派になって、としみじみ。(でも、勘九郎さんのいたずら好きは今でも変わらないようです)團子さんはここ最近で急に大人になられたとのことです。
あと、「ガンサー」。ワンピースはもう本格的にダンスをさせられるので大変だそうです。が、細かいとこはとにかく、最後にキメ顔ができるのがダンサーならぬ顔サー。ちなみに、網タイツは全身タイツなので意外と恥ずかしくないとか。
Dsc00145戸部さんはとにかくお二人にお任せしておけば大丈夫だと、本当に頼りにされているそうです。主役とはまた違って、目だってもいけないし、消えてしまってもいけないし、腰元と女中の違いもあれば、上方と江戸でも違うし、また演目によっても違う。さすがに、その辺りのお話を始められるともう止まらなくなる感じで、本当に難しいのだなあと思います。同時に、凄く自信と誇りを持たれていることも感じました。

こちら、とてもよく撮れたと思われる渾身の一枚です!

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2017年11月19日 (日)

歌舞伎「鯉つかみ」「奥州安達原」「雪暮夜入谷畦道」

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「湧昇水鯉滝 鯉つかみ」
面白かったです! お話も分かりやすく、ケレンも満載でユーモアもありますし。そして、染五郎さん名では最後の出演とのことです。 お話は、脚本を新しくしたそうですが、小桜姫(児太郎さん)を許婚の滝窓志賀之助(染五郎さん)と志賀之助に化けた鯉の精(染五郎さん)が取り合います。小桜姫が両手に二人の志賀之助で満更でもない、というのがちょっと面白いですが。まあそうこうしているうちに、鯉の精に頭から食われちゃうんですけどね……。その姫を食った鯉を志賀之助ってばグルグル振り回してお姫様大丈夫かしら、と思ったり……? それはともかく、やっぱり圧巻は最後の本水の大立廻り。早替りしつつの立廻りなので、瞬きする暇もありません。

「奥州安達原 環宮明御殿の場」
袖萩祭文です。ええと、もう近松半二作品のあらすじは放棄します……。安倍貞任:吉右衛門さん、袖萩:雀右衛門さん、平 傔仗:歌六さん、浜夕:東蔵さん、八幡太郎義家:錦之助さん、安倍宗任:又五郎さんです。これだけのキャストですから間違いありません。素晴らしくないわけがないです。雀右衛門さん、渾身の袖萩でした。お君ちゃん役の子役さんも、声がとても響いてお上手でした。

「雪暮夜入谷畦道 直侍」
こちらも豪華キャストで。今月は夜の部もまた凄いですよね。 悪事のせいで追われる片岡直次郎(菊五郎さん)と恋人の遊女三千歳(時蔵さん)のつかの間の逢瀬のお話。やっぱり、菊五郎さんがカッコイイです。お声がいいですよね~。お家の芸(!?)お蕎麦の美味しそうなこと!お蕎麦屋の家橘さん・齊入さん夫婦と、按摩・丈賀の東蔵さんの素朴で人の好さそうなところが、なんかほのぼのします。そして、三千歳の激しさ。今日は鯉つかみといい、ちょっとイチャイチャが多めです……。清元の延寿太夫さんの歌声も美しかったです。

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2017年11月14日 (火)

歌舞伎「坂崎出羽守」「沓掛時次郎」

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国立劇場で新歌舞伎、しかも二本立てなんて珍しいと思うのですが。
「坂崎出羽守」
お話は、大坂夏の陣で燃え盛る大坂城から千姫(梅枝さん)を救い出した坂崎出羽守(松緑さん)に嫁がせると約束した徳川家康(梅玉さん)。しかし、坂崎が顔に火傷を負ってたり、ちょっと不器用だったりするところが乙女心に響かず(残念!)千姫はイケメンの本多平八郎(坂東亀蔵さん)に恋をします。で、最終的に千姫の本多家への嫁入り行列に乱入する坂崎……。ホント、哀れです。堪えよう堪えようとして最終的に爆発というのは、「時今也桔梗旗揚」の松緑さんの光秀を思い出します。お話的にはこの前の歌舞伎座の「沓手鳥孤城落月」の続きですね。梅枝さんとか萬次郎さんとかも引き続き……?
千姫を駿府に送る二幕目の「宮の渡し船中」の舞台装置が面白く、舞台全体が船のへ先ですっぽんが船底へ下りる階段になってました。この船上で、坂崎と平八郎が釣りや鳥を射たりして競うのですが、坂崎は緊張していいところなし。ホント、哀れです……。
真面目で一本気な坂崎に、孫娘にひたすら甘い好好爺……と見せかけてかなり狸な家康、やっぱり梅玉さんがお上手です。坂崎が自分を見るような気分になる顔に傷を負った松川源六郎(歌昇さん)の忠臣ぶりが熱くて泣けます。一方、茶坊主の菊市郎さん、梅丸さんのお調子者ぶりは楽しいです。坂崎に怯える小姓の竹松さん、玉太郎さんも緊張感がよかったです。

「沓掛時次郎」
長谷川伸先生、やっぱりいいお話ですよね。筋の通った博徒・沓掛時次郎、梅玉さんがカッコイイ! 義理で斬らなければならなかった三蔵(松緑さん)の女房・おきぬ(魁春さん)と倅・太郎吉(尾上左近さん!)の面倒を見るのです。実の父親の敵なんてことは忘れて(笑)すっかり太郎吉に懐かれたり、おきぬとの間にほのかに愛が芽生えつつも、おきぬが死んでしまう……なんて上手すぎる展開。でも、嫌な感じの最後ではなく(いや、出羽守をディスってる訳では……)なんか温かな気持ちで幕になるのでした。

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アフタートーク
……はSNSで拡散してはいけないと言われましたので。(あれ、ブログってSNSなのかな)梅玉さんと松緑さんがお役について語られました。松緑さんが「わたくし」と言ってたところが「僕」になるくらい熱くなられてました。
特設サイトで公開されているインタビューでは、沓掛時次郎は二枚目の役者さんがやられてるので梅玉さんが嬉しそうでした。松緑さんは、幼心にお父様の出羽守で漂う暗さを感じ取っていた、というのがさすがと思いました。

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2017年11月11日 (土)

「管絃 青海波を聴く」

Img_20171111_185639_2お話「青海波に見る風景」
前半は解説とトークでした。「青海波」と云えば、やっぱり「源氏物語」の「紅葉賀」。光源氏の声が泣けるほど素晴らしいって、一体どれほどだったのだろうなぁと思いますが。それはともかく、それまであまり演奏されるものではなかったのに、「源氏物語」にこの華やかな場面が書かれたため、後の帝が権力を示すのに使われることになったというのが面白いです。文化の影響力って凄いですね。
お話は、多忠輝先生が面白かったです。800年頃から楽家というのも凄いですが、右舞のお家なので左舞である「青海波」はできないので憧れなのだそうです。そういうものなのですね~。
また、鞨鼓、太鼓、鉦鼓による奏法の実演がとても参考になりました。(メモを取らなかったので記憶違いがあったら済みません)「青海波」に特有の「男波」と「女波」。通常、四拍子が八小節で太鼓一回のところを、太鼓がいっぱい入る(確か、五と七だったような)のです。男波のほうが少し荒々しいとのことでしたが、その違いは残念ながらちょっと分かりませんでした……。(何か、トンのところが、トントンだったかも、くらい……)そして、これも特有の「千鳥懸」。この八小節を何回やって「男波」があって「女波」があって再び「千鳥懸」というような構成を聞いたので、雅楽ってそういうことだったのかと理解しました。次の実際の演奏も分かりやすかったです。
あと、通常の舞楽では絃楽器を用いないのに、「青海波」は箏や琵琶が入る管絃舞楽であることも特徴だそうです。こちらは東儀雅季先生が実際に唱歌でご説明くださいました。絃楽器が入ると重くなるので息継ぎが大変らしいです。
もう一つ、「青海波」にしか使わないという反鼻という楽器。木でできた巴型、オタマジャクシの尻尾の部分を持って頭の部分を撥で叩く感じでした。

垣代・管絃舞楽の次第で聴く「青海波」
今日は舞は入らないのですが、舞楽として序「輪台」破「青海波」の二曲を一曲とする古式に則った正式な演奏とのことでした。
「源氏物語」の垣代40人というのが代々の帝の憧れ(?)だったわけですが。垣代、舞台の後ろに立って楽器の演奏をしたりする人を、桐壺帝は身分の高い人とか評判の人を40人も集めたんだって! ということらしいです。さすがに今日はそんなに大規模ではなく(劇場の規模にぴったりな編成とのこと)、あと座られての演奏でした。実際、立って琵琶を演奏する場合は、ギターのようにストラップで吊るそうです……。箏は隠れたところで通常演奏とのことでした。この垣代と演奏(管方)は別なのですね。垣代は、詠と唱歌が入ります。
前半のお話に従って、拍子を数えたり、「波返しキター!」などと楽しんで聴きました。いつか舞も観てみたいです。多先生いわくカッコイイそうです。

アンケートに答えたら、メモ帳をもらいました。
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2017年10月28日 (土)

スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」麦わらの挑戦

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まずは猿之助さんが無事に回復されることをお祈り申し上げます。事故のあったつい2日前には誰よりも楽しそうな猿之助さんを拝見したばかりだったのでショックでした。また同時に、その場に居合わせたお客さんも不安だっただろうなと思ったのですが、最初の断片的な情報で時間とスッポンと聞いてカーテンコールの時かなと思い当たりまして、とりあえず中断などにはならなくて少しほっとしたりしました。
本日はもともと特別マチネ「麦わらの挑戦」を観るつもりでチケットを取っていましたが、挑戦がはからずも既に実践になってしまいましたね……。でも、毎日の公演を重ねた尾上右近さんルフィーが観られるというのも、これはこれで貴重です。

そういう訳で、尾上右近さんルフィー、もの凄い全力で演じられているのがひしひしと伝わってまいりました。全力と云えば、全力疾走。ホント、花道とかかなりのスピードで駆け抜けていかれました……もちろん猿弥さんが追いかけていない時でも! (って、ちょっと思い出し笑い……。猿弥さんが、「本当に速く走らなくても速く走っているふりをすればいいんだよ」と云ったところ、「嫌っ」って返されたそうです)ルフィーは初々しさがあり、女方はやはり安定感があってハンコックは美しかったです。新悟さんサディちゃんもなかなかサディちゃんでした。あんな妖艶な新悟さん、ナミさんとの違いを見比べるのも面白いです。そういえば、ボン・クレーの「これも何かの縁のすけ」はなかったです。ボン・クレーの本水の後の引込み、あのポーズを本当に真面目な表情でされているのが凄い!(褒めてます……)絶妙のタイミングで大向こうが入ってました……。本水と云えば、先日観た時は水の勢いが強くて隼人さんが上れなかったことがありました。あの時はまだ初日の次の公演でしたからね……。もちろん、今はもう皆さんバッチリです。ニューカマーのかたがたのダンスも何か完成度が上がってました。あ、そうだ。Far Far Timeで、ダズ・ボーネス(石橋直也さん)にハイタッチしていただきました♪

Img_20171028_120816 Img_20171028_120834今日はイヤホンガイドを借りてみました。ワンピース特別仕様になってます。(麦わら付き)声優さんのコメントも面白かったですし、幕間にワンピース原作の解説なんかもあって、「ああ、カームベルトとかあったよね」って、初心に返りました(?)それぞれの能力の説明なんかも谷原章介さんのよいお声でありますので、原作をご存知ないかたも、いろいろ忘れてしまっているかたにも、よいのではないかと思います。

Img_20171028_115316_2先日は海賊弁当だったので、今日は歌舞伎弁当にしました。両隣ともお独りで来られたかたのようで、3人並んで黙ってお弁当の写真を撮る……。

今月は、「マハーバーラタ戦記」から始まって、先日の「ヤマトタケル」とか何だか不思議空間を旅したようです。どれもキラキラした世界です。

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冒険はまだまだ続きます。

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2017年10月23日 (月)

シネマ歌舞伎「スーパー歌舞伎 ヤマトタケル」トーク付

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週末から台風が心配でして。仕事だったら行かなくてもいいけど、今日は何をどうしても東銀座までたどり着かなくてはならない! せめて最悪トークショー(16:00~)までには!! おかげさまで無事に着きましたが、その後は終日電車が止まってしまいました……。

さて、「ヤマトタケル」です。映画で3時間40分の超大作って凄いですね。休憩が2回もあって有難いです。
実は三代目のDVDしか観たことがなかったので、楽しく拝見しました。映画ならではの点を挙げるなら、やっぱり近さですよね。普段はなかなか細かな表情や仕草など見えませんものね。あと、衣装なんかも素敵です。きっと模様とかそれぞれコンセプトがあるのでしょうね。(タケヒコが蝶だなぁとか思ってました)ただ、カット割りに関してはアテルイとか三人吉三のように奇抜なものはなかったです。もう一点は音。おそらく生で聴くよりもいい音なのだと思います……。
平成25年の時のものとのことで、皆さんちょっとずつお若いのも、またある意味でお楽しみ? 寿猿さんもちょっとお若いです……。こんなにお小さかった團子さんが立派になってと微笑ましい一方で、既に初舞台から間の取り方とか完璧って末恐ろしい……。襲名披露の口上からカーテンコールまで入っているのもお得(?)ですね。

Dsc001051_2東劇で映画鑑賞後、新橋演舞場で市川猿弥さん・市川笑三郎さんのトークショーがありました。お二人ともこのようなカジュアルな衣装でご登場です。今日はワンピースが昼のみ公演で、尾上右近さんがそっと後ろのほうにいらして会場がざわつき……猿弥さんが拗ねる、という一場面も。ホント、猿弥さん、芸人さんもかくやというくらい会場を笑わせっぱなしでした。笑三郎さんはお優しい感じで真面目にお話され……てると、猿弥さんに茶化されるみたいなパターンでした……。
お話は、まず「ヤマトタケル」の歴史を振り返る。初演の時は猿弥さん18歳、受験生とか。笑三郎さんは澤村宗十郎さんの倭姫の真似がきっかけだったとか。スーパー歌舞伎はスタッフもスーパーなこととか。でも「オオクニヌシ」はウケなかったとか……。「ヤマトタケル」は、やりたいことを全部詰め込んだ集大成だそうです。これと、「ワンピース」の構成が似ている、と松竹の松本さん。シネマ歌舞伎は古いものでも古くならないワインなんです、と熱く語っておられました。(で、猿弥さんが首を傾げておられました……)映像を残しておけばどんなに凄かったかということを後世に証明できるのでシネマ歌舞伎を制作していきたいとくようなことでした。笑三郎さんも、商品としての自分の映像を観る機会が今までなかったのでよい体験だとおっしゃられていました。(で、猿弥さんはシネマ歌舞伎は観たことないそうです……)
「ワンピース」で大変なところはとの質問に、猿弥さんは新ルフィーの全力疾走についていけないとこぼしていまして、ご本人に向かって「あいつが」とか云われてました。笑三郎さんはやはりニョ言葉だそうです。

今週末は再び「ワンピース」を観に行きます。また、ちょっと違った観方ができそうで楽しみです。

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2017年10月22日 (日)

歌舞伎「沓手鳥孤城落月」「漢人韓文手管始」「秋の色種」

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「沓手鳥孤城落月」
修羅場だ……。序幕の「大阪城内奥殿の場」、女性ばかりの、ほぼ動きのないせりふ劇で、女って怖い……と思いました。が、実際には舞台には女性がひとりもいないというのが歌舞伎の凄いところですね。
大坂夏の陣、落城目前の大阪城奥殿で、千姫(米吉さん)を落とそうとする徳川方の常磐木(児太郎さん)、それを阻止しようとする淀の方(玉三郎さん)。淀の方は薙刀は持ってくるわ、家康を狸だとか云うわ、千姫を掴んで離さないわ、ぐちぐち云うわ、常磐木を拷問させようとするわ、なかなか凄いのです。これが、なまじ美しいだけにより凄味があります。それに対して、常磐木はおびえもせずに舌を噛んで潔く自害してしまいます。こういう気の強い女性、児太郎さんはお上手です。淀の方に疑われて自害しようとする饗庭の局(梅枝さん)が哀れだったり、正栄尼の萬次郎さんは登場されただけで何か落ち着きます(?)ここではまだ淀の方は正気な(はずな)のですが、ちょっとずつ「あれ?」という感じでずれていくのが玉三郎さんの凄さです。
二幕目「城内山里糒蔵階上の場」は、いよいよもう落城かというところ。なんと豊臣秀頼、七之助さんです。玉三郎さんと七之助さんのこういう共演も見どころだと思います。この淀の方はもうすっかり正気を失ってしまっています。繰り返しになりますが、なまじ美しいだけに凄まじさがあります。そして、そんな母親を手に掛けようと苦悩する秀頼の姿も美しい……。

「漢人韓文手管始」
長崎が舞台ということで異国情緒あるれる舞台と、登場人物のキャラクターがはっきりしていて面白かったです。まず、唐の正使・呉才官、ちょっと小狡い感じ。片岡亀蔵さん、何かこういうお役が似合いますよね。呉才官は日本語で喋ってますが、副使・珍花慶(橘太郎さん)は中国語を話します、「シャンシャンパンダ」……。通訳の幸才典蔵は芝翫さん。最初は愛想がよくて親切で懐も広い……から一転、高圧的で意地悪な人に。恋の恨みは怖いです。饗応役の相良家家老・十木伝七は、鴈治郎さん。忠義者で、お家のために恋人・高尾を差し出そうとさえします。あと、相良家の若殿・和泉之助は、高麗蔵さん。この若殿がまた情けなくていい感じです。常に皆が「バカ殿」って云ってるように聞こえちゃいます……。和泉之助と恋仲で呉才官の想い人、傾城・名山太夫は米吉さん。ちょっと我がままでそこが可愛いです。そして、伝七の恋人で典蔵の想い人が傾城・高尾太夫の七之助さん。伝七一筋で典蔵の想いに気付かないことが悲劇になります……。

「秋の色種」
まさしく今の季節にぴったり……と云うには、何かもう急に冬になってしまいましたが。
曲が美しすぎて振りがつけられないくらいの名曲だそうです。が、玉三郎さん、梅枝さん、児太郎さんの踊りが艶やかでした。秋の草花が柔らかく描かれたぼんやりと薄暗い舞台、チンチロリンという虫の合方も面白く、梅枝さんと児太郎さんの琴の演奏も素敵でした。

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2017年10月 9日 (月)

歌舞伎「霊験亀山鉾」

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元禄14年に実際にあった「亀山の仇討」をもとにした鶴屋南北の作品をもとにして更にだいぶ補綴した作品、とのことです。
お話は、石井右内を闇討ちした藤田水右衛門(仁左衛門さん)が、仇討を挑む弟・石井兵介(又五郎さん)、養子・石井源之丞(錦之助さん)を次々と返り討ちにし、最終的には幼い源之丞の子が本懐を遂げて幕。
水右衛門が悪い奴なのですよ。兵介に毒盛ったり、源之丞を落とし穴にはめたり、斬った後にぐりぐりとどめをさしたり……。でも「役者の仁左衛門にそっくりな」色男です。さすが仁左衛門丈、もう立ち姿だけでも美しいです。一方、やや三枚目役・掛塚官兵衛の彌十郎さんを指して大きな草履って……。
そして、水右衛門に瓜二つなのが八郎兵衛(仁左衛門さん)。浄瑠璃の「お妻八郎兵衛」のパロディが入ったり、早替わりなどのお楽しみはあるものの、水右衛門が仲間にするメリットが何かあるかしらと思っていたのですが。イヤホンガイドによると、鶴屋南北が提携していた五代目松本幸四郎のいろいろな色悪を見てみたかったのではないか、とのこと。(作者の特権ってやつですね。羨ましい……)八郎兵衛は根っからの悪党という感じではないのですが、源之丞の愛人・芸者おつま(雀右衛門さん)にフラれて、可愛さ余って憎さ百倍。本水の雨のなかでの立廻りは凄いです。
で、問題なのが(!?)源之丞。これが稀代のプレイボーイ。後の仇討で重要になる跡取りをもうけているお松(孝太郎さん)は、下部の妹なので妻とは認めらていません。水右衛門を探して町人に身をやつせば、芸者のおつまにも子どもができてるし(水右衛門にお腹の子とも殺されていまいましたが)女将のおりき(吉弥さん)ともただならぬ仲……。
しかし、女性陣はしっかり者です。お松は跡取り源次郎とともに仇討に成功しますし、おつまは八郎兵衛と水右衛門の手下だったおりきも倒します。結構、強いです。あと、源之丞の母・貞林尼(秀太郎さん)は源次郎の病気を治すために自らを犠牲にしたりします。源次郎の子役さんが健気で可愛らしかったです。
大詰、亀山曽我八幡宮の祭礼で華やかです。この霊験で敵討が成功する……あ、だからこのタイトルなんですね。

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2017年10月 7日 (土)

スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」

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前回公演で衝撃を受けた私とのもこさんは、この感動を友人Nにもぜひ知って欲しい―――と、ずっと再演の機会を待っていたのです。歌舞伎には興味ないようなのですが、2.5次元とかさんざん行っている人なのでこれはきっと大丈夫だろうとは思ってましたが、予想以上に楽しんでくれてよかったです。……それどころか、本水がいたくお気にめしたようで、水かぶり席で観たいとか云いだしました……。うん、次回は前のほうの席を取るね。何かでも1度観ると、もっと近くで観たいってなるのは分かります。

楽しかった~!!もう、ほんと何の気構えもなく楽しむために行きました。細部がちょっと前回と違っていたりしますが、何よりも全体的に皆さんの「役を自分のものにしている」感が凄い!前回よりもパワーアップ、ニューカマーのかたがたもテンション高め、みたいな……。逆に、覚えのあるところは「ああ、これが観たかった」という歌舞伎的な楽しみもあります。
そして、お待ちかねのFar Far Time。事前にNにタンバリンが欲しいんだよねと話したら、「何に使うの!?」ってビックリされました。いやもう「観れば分かるから」ってニヤニヤしちゃいますよね。幕間にマーガレットとスイトピーによる(可愛い!)タンバリンの説明もありますし、劇中でタンバリンを出すタイミングの指示もございますので安心です……。何より猿之助さんが誰よりも一番楽しそうでした。
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お話は原作57巻~60巻あたりです。(って、何故かこの後に東京タワーの麦わらカフェで原作の復習をさせられました……。改めて、思ってたよりキャラの再現率が完璧で驚きました……)前回と違うのは、小林幸子さん……もとい、ハンコックの衣装が更にきらびやかになってましたが、ええと、それは置いといて。最後、レイリーは出てこないのですね。尾上右近さんのサディちゃんがノリノリだったこととか、春猿さんのナミさんは姐御でしたが、新悟さんはほんとすらっとしてて清楚系なこととか、あとやっぱり市川右近さんのチョッパーが可愛い! すじがきのインタビューがこれまた可愛いのですよ。お気に入りのキャラが白ひげ……もう、そこで泣ける(?)平岳大さんのエースは私は初めてなのですが、カッコイイですね。そして、安定のレギュラー陣。高評価のボン・クレーは、もちろんNも絶賛でした。

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2017年10月 1日 (日)

新作歌舞伎「極付印度伝マハーバーラタ戦記」

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今月は(今月も?)スケジュール過密のため初日から飛ばしてまいりますので、よろしくお願いいたします……。

「極付印度伝マハーバーラタ戦記」
インドの叙事詩マハーバーラタから、太陽神の子カルナを中心とした部分をもとにしたお話とのことです。何となく「幻想神空海」みたいなものをイメージしていたのですが、中華風でもなく、衣装なんかはまったく日本でした。でも、皆さんビンディを付けていたり、袴の模様がさりげなく梵字だったり、なんとお姫様が象に乗って登場したゾウ!(……)あと、竹本が入るのですが、三味線が聞いたことのないメロディーを奏でてました。そして、何と云っても上手の打楽器ブース。木琴(鉄琴?)と太鼓がテーマソングを担当していて、異国情緒あふれる感じです。

お話は、象の国の後継者争いに神様が介入するというもの。詳しくは特設サイト を見ていただくとして。個人的には、とっても少年漫画的だと思いました。(逆か。むしろ漫画のほうが古典に材を取ってるのかも?)王様の兄の子ども百人って……聖闘士星矢だ! 王位継承権をかけて武芸大会って……天下一武道会か! 最強の武器「シャクティ」(ライト槍)キターっ!! ……はっ、失礼しました。ちょっと興奮しました。

まず、序幕は神様の世界。那羅延天(菊五郎さん)、シヴァ神(菊之助さん)、梵天(松也さん)、大黒天(楽善さん)……音羽屋さん勢揃いです。神様、金色でピカピカで、まさしく神々しいです。ここで人間界の戦いを止めるため、太陽神(左團次さん)が慈悲の子・迦楼奈(菊之助さん)を、帝釈天(鴈治郎さん)が武力を持った子・阿龍樹雷(松也さん)を、人間界に送り込みます。
そんなこんなで、亡くなった現王様の五王子、百合守良王子(彦三郎さん)、風韋摩王子(坂東亀蔵さん)、阿龍樹雷王子、納倉王子(萬太郎さん)、沙羽出葉王子(種之助さん)VS王様の兄の子百人……のうち鶴妖朶王女(七之助さん)、道不奢早無王子(片岡亀蔵さん)、迦楼奈。この両陣営が騙し騙され追放されたり戦ったりするわけです。
五王子の末っ子ナクラとサハデバのふたりが双子で、心優しくて可愛いです。ヅルヨーダはカルナを友達と云っていましたが、たぶん好きだったんじゃないかな。ビーマの狼牙棍にやられて階段落ちの壮絶な最期を遂げました。

打楽器演奏とかスーパー歌舞伎的な新しい演出もありましたが、お馴染みの見得とか六方の引込みとかぶっ返りとかもありましたし、両花道での渡り台詞も恰好良かったです。

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